# 既存システムのAI管理移行(汎用版) 版:1.0(2026-10-24) 作成:JumpStack株式会社 本書は自由に複製・改変して利用できます。改変版を配布する場合は出典を明記してください。 すでに稼働しているシステムを、AIエージェント(Claude Code 等のコーディングエージェント全般)の管理下に移すときの、**移行前に用意するもの**と**任せる範囲の広げ方**の指針。 新規開発と違い、稼働中のシステムは「今どう動いているか」の記録が人の頭の中と散らばった資料にしかない。本書はそれをAIが読める形にし、壊さずに任せる順序を決めるためのもの。 新しい移行では、本書をそのまま `docs/` に置き、§8の `<...>` をそのシステムの値で埋める。**ファイルはこれ1つだけ**(別ファイルは作らない)。 姉妹編との関係(3本で1組): - **AI開発ハーネス設計**(`ai-harness-design.md`):AIに何をさせないか、どこで止めるか(境界) - **AI開発コンテキスト設計**(`ai-context-design.md`):AIが判断するとき何を知っているか(材料) - **本書**:今、何がどう動いているか(現状)と、任せる範囲をどう広げるか(順序) 既存システムでは、本書を**最初に**埋める。現状が分からないまま境界や材料を設計しても、実態と食い違う。 本書の読み方: - **意思決定者・発注側**:「要約」と§6(段階的な委任)だけで足りる - **実装者・運用担当**:全体。§8のテンプレートと§9の記入済み見本を手元に置いて作業する - **AIエージェント**:§0の手順に従う ツール名(WordPress、AWS、GitHub Actions 等)はすべて**例**であり、同じ役割を果たすものに読み替えてよい。 --- ## 用語(本書で使う言葉) | 用語 | 意味 | |---|---| | **台帳** | 何が・どこで・何の上で動いているかの一覧。リポジトリ・サーバー・ドメイン・DB・外部サービス・定期処理を含む | | **動作確認(スモークテスト)** | 「正常に動いている」を確かめる最小限の手順。自動テストがないシステムでは、これが最初のテストになる | | **復旧** | バックアップから元の状態に戻すこと。戻せることを一度試していなければ、バックアップがあるとは言えない | | **暗黙知** | 文書になっていないが、運用している人が知っている取り決め。「ここは触ると壊れる」「月末だけ動く」など | | **安全な作業環境** | 本番と切り離してAIが試せる場所。開発環境・ステージング・ローカルのコピー | | **委任段階** | AIに任せる範囲のレベル。読むだけ→開発環境で変更→本番の軽微な変更→定型運用の自動化、の順に広げる | | **昇格条件** | 次の委任段階に進んでよいと判断する条件。動作確認の通過、事故ゼロの期間など | | **EOL** | サポート終了(End of Life)。EOL後はセキュリティ修正が出ない | | **不明** | 調べても分からなかったことを、分からないまま記録する印。空欄とは区別する | --- ## 要約(意思決定者・発注側向け) **何が違うのか。** 新規開発なら、作りながら記録が残る。稼働中のシステムは、動いているという事実だけがあり、なぜそう動いているかの記録がない。AIに任せる前に必要なのは、高度な設計ではなく、**今の状態を書き出すこと**と、**壊したときに戻せること**の2つ。 **3つの原則。** 1. **戻せることを先に確かめる。** 復旧を一度も試していないバックアップは、ないのと同じ 2. **分からないことは「不明」と書く。** 空欄は「調べていない」のか「存在しない」のか区別できない。「不明」と書いてあれば、AIは触る前に確認する 3. **任せる範囲は段階的に広げる。** 最初は読むだけ。壊さないことを確かめてから、次の段階へ **人間が持つもの。** 「触ってはいけない場所」の判断、復旧を試す承認、委任段階を上げる判断、元の開発会社や契約先との連絡。 **移行前の4つの質問。** 次に答えられなければ、まだAIに変更を任せる段階ではない: - このシステムが正常に動いていることを、何を見れば確認できるか - 壊れたとき、何分で、誰が、どこから戻せるか。最後に試したのはいつか - 本番と切り離して試せる場所はあるか - 触ると壊れる場所、理由の分からない設定は、どこにあるか 「動いているから大丈夫」は、現状の把握ではなく運に近い。 --- ## 0. AIエージェントへ:このファイルを読んだら最初にやること 既存システムの移行で本書を渡されたAIは、次の手順で**この同じファイルの§8を埋める**。別ファイルは作らない。この段階ではAIの委任段階は「0:読むだけ」であり、**システムの設定・データ・本番環境を一切変更しない**。 1. **台帳(§8-A)を作る。** リポジトリ・設定ファイル・CI定義・インフラ定義・依存関係の一覧から、何が・どこで・何の版の上で動いているかを列挙する。版はEOL日と並べる。読み取れないもの(サーバーの中身・管理画面にしかない設定)は「不明(確認先:<誰・どこ>)」と書く 2. **動作確認の手順(§8-B)の案を作る。** コードと設定から、主要な機能(利用者に見える画面・外部との連携・定期処理)を拾い、「何をすると、何が起きれば正常か」の形で5〜10項目に絞る。人間に確認を依頼し、実際に通ることを確かめた日付を入れる 3. **復旧(§8-C)の現状を調べる。** バックアップの設定・保存先・世代数をコードと設定から読み取る。**復旧を試す手順を提案し、実施は人間に依頼する**(AIは実施しない) 4. **暗黙知(§8-D)を質問として列挙する。** コードから読み取れる「理由の分からない設定」「直接編集されている形跡」「コメントで警告されている箇所」を挙げ、人間に「触ってよいか」「なぜそうなっているか」を尋ねる。答えが分からなければ「不明」のまま記録する 5. **安全な作業環境(§8-E)の有無を確認する。** なければ、作る手順を提案する(本番のコピー・ダミーデータ・ステージング) 6. **段階的な委任(§8-F)の初期値を提案する。** 全項目を「段階0」から始め、昇格条件の案を添える 7. **関係者(§8-G)は人間に確認する。** コードやドキュメントに名前があっても、現在の担当とは限らない 8. 本ファイルを指示書から1行で参照させる(例:「現状と委任段階は `docs/ai-migration-design.md` §8 を正とする」) 判断を求める際は、選択肢と推奨を添える。 **人間が判断できない項目、または「おすすめで」と返された項目は、推奨案で仮決定して先へ進む。** 仮決定した値には「(仮: AI推奨)」と付け、作業の最後に「決めたこと」と「仮決定したこと」を分けて一覧で報告する。迷ったら安全側(委任段階を低く、触ってはいけない場所を広く)を選ぶ。人間が確認した時点で「仮」を外す。ただし、**委任段階の昇格・復旧の実施・本番への変更・外部契約**は仮決定せず、人間の判断を待つ。 空欄のまま「未定」と書く場合は、いつまでに決めるかを必ず付ける。 --- ## 1. 考え方 稼働中のシステムに手を入れるとき、最大の危険は「壊すこと」ではなく、**壊したことに気づかないこと**と**戻せないこと**である。 AIは人より速く変更できる。速さは、気づく仕組みと戻す手段がなければ、損害の速さになる。 だから順序は、 1. 今の状態を書き出す(台帳) 2. 正常を定義する(動作確認) 3. 戻せることを確かめる(復旧) 4. 触ってはいけない場所を決める(暗黙知) 5. 安全に試せる場所を用意する(作業環境) 6. そのうえで、少しずつ任せる(委任段階) 1〜5が整うまで、AIは「読むだけ」に留める。読むだけでも、台帳づくりと質問の列挙はAIが担えるので、移行の作業自体は最初から速い。 ハーネス設計(止める仕組み)とコンテキスト設計(判断の材料)は、この現状把握の上に載せる。現状が分からないまま境界を引いても、実態とずれた境界になる。 ## 2. 基本原則(優先順) 1. **読むだけから始める。** 最初の委任段階は「変更しない」。台帳・質問・提案を出すところまで。 2. **戻せるまで変えない。** 復旧を一度試してから、本番に関わる変更を許可する。 3. **「不明」を許す。** 分からないことを分からないまま記録する。埋めるために推測で書かない。 4. **正常を先に定義する。** 動作確認の手順がなければ、変更後に「壊していない」と言えない。 5. **本番で試さない。** 安全な作業環境で試してから本番へ。作業環境がなければ、作ることが最初の仕事。 6. **段階は条件で上げる。** 期間や気分ではなく、昇格条件(動作確認の通過・事故ゼロの期間・復旧の実施)を満たしたら上げる。 7. **関係者を切らない。** 元の開発会社・契約先・鍵の管理者を把握し、AIが「誰の承認が要るか」を判断できるようにする。 ## 3. 移行前に用意する7つ | 用意するもの | 何のため | 最低限 | 整った状態 | |---|---|---|---| | **A. 台帳** | 何が・どこで・何の上で動いているか | リポジトリ・サーバー・ドメイン・DB・外部サービス・定期処理の一覧と版 | EOL日・契約先・更新の責任者まで揃い、四半期ごとに見直されている | | **B. 動作確認の手順** | 変更後に「壊していない」と言うため | 人が手で確認できる5〜10項目 | 自動化され、変更ごとに実行される | | **C. 復旧手順** | 壊したとき戻すため | バックアップの場所と戻し方。一度試した記録 | 復旧時間が分かっており、年1回試している | | **D. 暗黙知の記録** | 触ってはいけない場所を知るため | 「直接編集している」「理由不明だが変えると壊れる」の一覧 | 理由が調べられ、「不明」が減っている。触ってよい範囲が明確 | | **E. 安全な作業環境** | 本番で試さないため | 本番のコピー(ダミーデータ)で動く環境 | 本番と同じ構成のステージング。CIから自動で作れる | | **F. 段階的な委任計画** | 任せる範囲を安全に広げるため | 現在の段階と、次に進む条件 | 段階ごとの実績が記録され、昇格の判断が記録で行える | | **G. 関係者と連絡先** | 承認・契約・鍵の所在を知るため | 元の開発会社・サーバー契約者・ドメイン管理者・鍵の保持者 | 役割ごとの連絡先と、不在時の代替が決まっている | AからEは、AIが「読むだけ」の段階で下書きを作れる。FとGは人間が決める。 ## 4. 台帳の作り方 台帳は「何が動いているか」の一覧であり、移行のすべての土台になる。 - **単位は「動いているもの」ごと。** Webサイト、API、管理画面、バッチ、DB、外部サービス連携、ドメイン、証明書 - **各行に「版」と「EOL日」を並べる。** 版だけ書いても、古いかどうかが分からない。PHP・言語ランタイム・フレームワーク・CMS・主要プラグイン・OS・DB - **「どこに」は、場所と契約の両方。** レンタルサーバー名・クラウドのアカウント・リージョン、そして契約者・支払い者 - **外から見えるものと見えないものを分ける。** 公開URLの応答ヘッダーやHTMLから読める版(CMSの版・プラグインの版)と、サーバーに入らないと分からない版(PHP・OS)がある。後者は「不明(確認先)」として残す - **定期処理を忘れない。** cron・スケジューラ・メール送信・外部からの Webhook。月末・年度末だけ動くものは、動作確認の手順にも載せる ## 5. 動作確認・復旧・暗黙知 ### 動作確認の手順 - 「何をすると、何が起きれば正常か」の形で書く。「トップページを開く → 200 で返り、最新のお知らせが表示される」 - 利用者に見える流れ(閲覧・登録・ログイン・決済・問い合わせ)、外部との連携(メール・決済・API)、定期処理(バッチの完了)から、5〜10項目に絞る - 最初は手動でよい。AIに変更を任せる前に一度通し、通った日付を記録する - 自動化できるものから自動化し、変更ごとに実行する。これが既存システムにおける「テスト」の出発点になる ### 復旧 - 「バックアップがある」と「戻せる」は別。**戻す手順を一度実行し、何分かかったかを記録する**まで、復旧手順があるとは言わない - 戻す先は本番ではなく作業環境でよい。本番のバックアップを作業環境に展開できれば、復旧の確認と作業環境の構築が同時に済む - DNS・証明書・ドメインの期限と更新方法も、復旧の一部として記録する。期限切れは「壊れた」のと同じ結果になる - 復旧の実施は人間が行う(ハーネス設計§4)。AIは手順の提案と、結果の記録を担う ### 暗黙知の記録 - 「本番のファイルを直接編集している」「理由は分からないが、この設定を変えると壊れる」「このプラグインは更新すると表示が崩れる」「月末だけ動く処理がある」 - 分かっている人に聞き、分からなければ「不明」と書く。推測で理由を書かない - 「触ってはいけない場所」は、ハーネス設計§11-A(不変条件)の候補になる。理由が分かったものから、仕組みで止める形に移す ## 6. 段階的な委任 任せる範囲は、次の段階で広げる。全システム一律ではなく、§8-Fで作業の種類ごとに段階を決める。 | 段階 | AIができること | 昇格の条件(次へ進むために満たすもの) | |---|---|---| | **0. 読むだけ** | コード・設定・ログの調査、台帳と質問の作成、変更の提案 | 台帳・動作確認・復旧・暗黙知・作業環境(§3のA〜E)が最低限揃う | | **1. 作業環境で変更** | 作業環境でのコード変更・テスト・動作確認 | 作業環境での変更が動作確認を通る。本番の承認ゲート(ハーネス設計§6)が実動作で止まることを確認済み | | **2. 本番の軽微な変更(承認付き)** | 文言・設定値・依存の更新など、戻しやすい変更を準備し、人間の承認で反映 | 一定期間(例:4週間)、承認付きの本番変更で事故ゼロ。復旧を一度実施済み | | **3. 定型運用の自動化** | 更新の適用・監視・定期処理の実行を、決めた範囲で自動実行。異常時は人間へ | 自動化する作業の手順が文書化され、失敗時に止まる仕組みと通知がある | 段階は上げるだけでなく、事故やヒヤリがあれば下げる。下げた理由と、再昇格の条件を§8-Hに記録する。 ## 7. よくある失敗と対策 | 起きること | 原因 | 対策 | |---|---|---| | 変更したあと、どこかが壊れたことに数週間気づかない | 正常の定義(動作確認)がなかった | 動作確認の手順を先に作り、変更ごとに通す | | バックアップはあったが、戻し方が分からず数日止まる | 復旧を試したことがなかった | 作業環境への復旧を一度実施し、所要時間を記録する | | 理由の分からない設定をAIが「整理」して壊す | 暗黙知が記録されていなかった | 触ってはいけない場所を先に列挙し、「不明」は触る前に確認する | | 本番で試して、利用者に影響が出る | 安全な作業環境がなかった | 本番のコピーで動く環境を最初に作る | | プラグインやライブラリを一斉更新して表示が崩れる | 戻しやすさを考えずに大きく変えた | 1つずつ更新し、動作確認を通してから次へ。戻せる単位で変える | | CMS本体は最新なのに、PHPやプラグインが古いまま | 台帳が本体の版しか見ていなかった | ランタイム・プラグイン・OSまで台帳に載せ、EOL日と並べる | | 元の開発会社に連絡がつかず、鍵や契約の所在が分からない | 関係者を把握していなかった | 移行前に関係者と連絡先を確認し、鍵の再発行・契約の移管を済ませる | | AIに任せる範囲を一気に広げ、事故で全部止める | 段階と昇格条件がなかった | 段階を決め、条件を満たしてから上げる。事故があれば下げる | 教訓は「何が起きたか」ではなく「次に同じ状況で何を用意しておくか」の形で残す。 --- ## 8. 適用テンプレート(システムごとに埋める) ### 使い方 1. 本ファイルをプロジェクトの `docs/` に置く(別ファイルは作らない。この§8をそのまま編集する) 2. 各項目の **「何を書くか」「なぜ必要か」「記入例」** を読み、`<...>` を自分のシステムの値に置き換える。説明文は残しても消してもよい 3. 分からない項目は空欄にせず、調べて分からなければ「不明(確認先:<誰・どこ>)」と書く。推奨案で仮決定できるものは「(仮)」と付ける 4. 項目B(動作確認)を一度手で通し、項目C(復旧)を一度実施して、日付を入れる。ここまでが移行準備の完了で、委任段階1に進める 5. 以後、段階を上げ下げしたら項目F、事故・ヒヤリがあれば項目Hに追記する ### 対象システム - システム名:<システム名> - 最終更新: 担当:<氏名> - 現在の委任段階:<0〜3>(§6) ## A. 台帳 **何を書くか**:動いているものごとに、場所・版・EOL・契約・責任者。 **なぜ必要か**:何が動いているか分からなければ、何を守るかも、何が古いかも分からない。移行のすべての土台。 **書き方**:外から読める版と、サーバーに入らないと分からない版を区別し、後者は「不明(確認先)」と書く。 **記入例**:「Webサイト | WordPress 7.1.3 | — | レンタルサーバー〇〇 | 総務部 | PHP の版は不明(確認先:サーバー事業者の管理画面)」 | 動いているもの | 版 | EOL日 | 場所(サーバー・契約) | 責任者 | 備考・不明点 | |---|---|---|---|---|---| | | <版> | <日付/不明> | <...> | <...> | <...> | | <言語ランタイム(PHP・Node.js 等)> | <版/不明> | <...> | <...> | <...> | <...> | | <主要プラグイン・ライブラリ> | <...> | <...> | <...> | <...> | <...> | | | <...> | <...> | <...> | <...> | <...> | | <外部サービス連携(決済・メール・API)> | <...> | <...> | <契約者> | <...> | <...> | | <定期処理(cron・バッチ)> | <...> | — | <...> | <...> | <実行タイミング> | | <ドメイン・証明書> | — | <期限> | <登録事業者> | <...> | <...> | ## B. 動作確認の手順 **何を書くか**:「正常に動いている」を確かめる5〜10項目と、最後に通した日。 **なぜ必要か**:これがなければ、変更後に「壊していない」と言えない。既存システムにおける最初のテスト。 **書き方**:「何をすると、何が起きれば正常か」。手動か自動かを書く。 **記入例**:「問い合わせフォーム送信 | テスト内容を送信し、担当者のメールに届く | 手動 | 2026-10-24」 | 項目 | 手順と正常の条件 | 手動/自動 | 最後に通した日 | |---|---|---|---| | <トップページ表示> | <...> | <...> | <...> | | <ログイン> | <...> | <...> | <...> | | <主要な業務の流れ(登録・注文など)> | <...> | <...> | <...> | | <外部連携(メール・決済)> | <...> | <...> | <...> | | <定期処理の完了> | <...> | <...> | <...> | ## C. 復旧 **何を書くか**:バックアップの場所・世代・戻し方と、実際に戻してみた記録。期限のあるもの(DNS・証明書・ドメイン)。 **なぜ必要か**:戻せないなら、AIにもあなたにも、変更を任せられない。 **書き方**:「試した日」「かかった時間」「戻した先」を必ず書く。未実施なら「未実施(予定:<日付>)」。 **記入例**:「DB | 日次・7世代 | サーバー事業者の自動バックアップ | 管理画面から復元 | 2026-10-24・15分・作業環境へ」 | 対象 | 頻度・世代 | 保存先 | 戻し方 | 最後に試した日・所要時間・戻した先 | |---|---|---|---|---| | <ファイル> | <...> | <...> | <...> | <.../未実施> | | | <...> | <...> | <...> | <...> | | <設定(管理画面にしかないもの)> | <...> | <...> | <...> | <...> | | 期限のあるもの | 期限 | 更新方法 | 担当 | |---|---|---|---| | <ドメイン> | <...> | <...> | <...> | | <証明書> | <...> | <...> | <...> | ## D. 暗黙知・触ってはいけない場所 **何を書くか**:文書になっていない取り決め。直接編集している場所、理由不明だが変えると壊れる設定、特定の時期だけ動く処理。 **なぜ必要か**:AIは「整理」が得意で、理由の分からない設定を消しがち。先に「触るな」を伝える。 **書き方**:「場所」「何をすると壊れるか」「理由」「触ってよいか」。理由が分からなければ「不明」。 **記入例**:「`wp-config.php` の末尾の独自定数 | 消すと決済連携が止まる | 不明(元の開発会社が追加) | 触らない」 | 場所 | 何をすると壊れるか | 理由 | 触ってよいか | |---|---|---|---| | <...> | <...> | <.../不明> | <触らない/確認後に可/可> | ## E. 安全な作業環境 **何を書くか**:本番と切り離して試せる環境の有無と、本番との違い。 **なぜ必要か**:本番で試すと利用者に影響が出る。作業環境がなければ、作ることが最初の仕事。 **書き方**:なければ「なし(作る手順:<...>、予定:<日付>)」。 **記入例**:「ステージング | あり | 本番の前日コピー。決済はテストモード、メールは送信しない | 2026-10-20 に作成」 | 環境 | 有無 | 本番との違い(データ・外部連携・ドメイン) | 作った日/作る予定 | |---|---|---|---| | <ローカル/ステージング> | <あり/なし> | <...> | <...> | ## F. 段階的な委任計画 **何を書くか**:作業の種類ごとの、現在の委任段階(§6)と昇格条件。 **なぜ必要か**:一律に任せると、戻しにくい作業まで同じ速さで進む。種類ごとに段階を分ける。 **書き方**:「作業の種類」「現在の段階」「次の段階に進む条件」「上げた・下げた記録」。 **記入例**:「文言の修正 | 2 | 4週間事故ゼロで3へ | 2026-10-24 に1→2」 | 作業の種類 | 現在の段階 | 次に進む条件 | 変更の記録 | |---|---|---|---| | <文言・コンテンツの修正> | <0〜3> | <...> | <...> | | <プラグイン・依存の更新> | <...> | <...> | <...> | | <機能の追加・変更> | <...> | <...> | <...> | | <サーバー・インフラの変更> | <...> | <...> | <...> | | <定期処理の実行・監視> | <...> | <...> | <...> | ## G. 関係者と連絡先 **何を書くか**:元の開発会社・サーバー契約者・ドメイン管理者・鍵の保持者・承認者。 **なぜ必要か**:AIが「この操作は誰の承認が要るか」を判断し、人間が契約や鍵の所在を見失わないため。 **書き方**:役割ごとに「誰」「連絡手段」「不在時の代替」。連絡がつかない相手は「連絡不能(最終:<日付>)」と正直に書く。 **記入例**:「サーバー契約 | 総務 山田 | 社内チャット | 経理 鈴木」 | 役割 | 誰 | 連絡手段 | 不在時の代替 | |---|---|---|---| | 元の開発会社・保守契約 | <...> | <...> | <...> | | サーバー・クラウドの契約者 | <...> | <...> | <...> | | ドメイン・証明書の管理者 | <...> | <...> | <...> | | 鍵・パスワードの保持者 | <...> | <...> | <...> | | 本番変更の承認者 | <...> | <...> | <...> | ## H. 教訓(このシステム固有) **何を書くか**:移行の過程で起きた事故・ヒヤリと、段階を下げた記録。 **なぜ必要か**:同じ失敗を繰り返さないため。段階を下げた理由がなければ、再昇格の判断ができない。 **記入例**:「プラグインを3つ同時に更新して表示崩れ | 戻せる単位を超えて変更した | 1つずつ更新に変更。段階2→1に下げ、4週間後に再評価」 | 起きたこと | 原因 | 対策(次に何を用意するか/段階の変更) | |---|---|---| | <...> | <...> | <...> | ## 9. 記入済み見本(架空のシステム) §8を埋めるとどうなるかの見本。中小企業のコーポレートサイト(WordPress)を、元の開発会社から引き継いでAI管理下に移す架空の例で、固有名はすべて仮のもの。粒度の参考にし、§8を埋め終えたらこの節は削除してよい。 ```markdown ### 対象システム - システム名:サンプル商事 コーポレートサイト - 最終更新:2026-10-24 担当:山田 - 現在の委任段階:1 ## A. 台帳 | 動いているもの | 版 | EOL日 | 場所(サーバー・契約) | 責任者 | 備考・不明点 | |---|---|---|---|---|---| | コーポレートサイト(WordPress) | 7.1.3 | —(最新) | レンタルサーバー「サンプルホスティング」/契約者:総務 | 山田 | 自動更新オン | | PHP | 不明(確認先:サーバー管理画面) | — | 同上 | 山田 | 2026-10-21 の脆弱性対応を要確認 | | プラグイン:スライダー | 6.2.x | 不明 | 同上 | 山田 | 更新すると表示が崩れた記録あり(D参照) | | プラグイン:問い合わせフォーム | 最新 | — | 同上 | 山田 | — | | MySQL | 8.0 | 2026-04(Oracle の通常サポート) | 同上 | 山田 | サーバー事業者の対応を確認 | | 問い合わせメール送信 | — | — | サーバーの SMTP | 山田 | 送信先:info@ | | ドメイン | — | 2027-03-15 | レジストラ「サンプルドメイン」/契約者:総務 | 鈴木 | — | | SSL証明書 | — | 自動更新 | サーバー事業者の無料SSL | — | — | ## B. 動作確認の手順 | 項目 | 手順と正常の条件 | 手動/自動 | 最後に通した日 | |---|---|---|---| | トップページ表示 | https://example.jp/ を開く → 200、最新のお知らせが表示される | 手動 | 2026-10-24 | | 管理画面ログイン | /wp-admin/ にログインできる | 手動 | 2026-10-24 | | 問い合わせ送信 | フォームからテスト送信 → info@ に届く | 手動 | 2026-10-24 | | お知らせ投稿 | 下書きを作成・プレビュー・削除できる | 手動 | 2026-10-24 | | スマホ表示 | トップと会社概要が崩れていない | 手動 | 2026-10-24 | ## C. 復旧 | 対象 | 頻度・世代 | 保存先 | 戻し方 | 最後に試した日・所要時間・戻した先 | |---|---|---|---|---| | ファイル一式 | 日次・7世代 | サーバー事業者の自動バックアップ | 管理画面から復元 | 2026-10-22・20分・ステージングへ | | DB | 日次・7世代 | 同上 | 同上 | 2026-10-22・同時 | | サーバー管理画面の設定(PHP版・SSL) | — | 画面にのみ存在 | 手動で再設定 | 控えを docs/ に記録(2026-10-22) | | 期限のあるもの | 期限 | 更新方法 | 担当 | |---|---|---|---| | ドメイン | 2027-03-15 | レジストラの管理画面(自動更新オン) | 鈴木 | | SSL証明書 | 自動更新 | — | — | ## D. 暗黙知・触ってはいけない場所 | 場所 | 何をすると壊れるか | 理由 | 触ってよいか | |---|---|---|---| | `wp-config.php` 末尾の独自定数 | 消すと問い合わせフォームの送信先が変わる | 元の開発会社が追加。詳細は不明 | 触らない | | テーマ内 `functions.php` の末尾 | 直接編集されている形跡あり | 不明(確認先:元の開発会社、連絡不能・最終 2025-12) | 確認後に可 | | スライダープラグイン | 更新すると表示が崩れた(2025-08) | テーマ側の独自CSS依存とみられる | ステージングで試してから | ## E. 安全な作業環境 | 環境 | 有無 | 本番との違い | 作った日/作る予定 | |---|---|---|---| | ステージング(サーバー事業者の機能) | あり | 本番の前日コピー。メールは送信しない設定。ドメインは staging.example.jp | 2026-10-22 | ## F. 段階的な委任計画 | 作業の種類 | 現在の段階 | 次に進む条件 | 変更の記録 | |---|---|---|---| | 文言・お知らせの修正 | 1 | ステージングで5回通し、本番承認ゲートの実動作確認が済んだら2へ | 2026-10-24 に0→1 | | プラグイン・WordPress の更新 | 1 | 1つずつステージングで更新し動作確認が通ること。4週間事故ゼロで2へ | 2026-10-24 に0→1 | | テーマの変更・機能追加 | 0 | D の「不明」が解消するまで0 | — | | サーバー設定(PHP版など) | 0 | 人間が実施。AIは手順の提案のみ | — | | 監視(表示・証明書期限) | 1 | 通知の仕組みができたら3へ | — | ## G. 関係者と連絡先 | 役割 | 誰 | 連絡手段 | 不在時の代替 | |---|---|---|---| | 元の開発会社 | 株式会社サンプル制作 | メール(連絡不能・最終 2025-12) | — | | サーバー契約者 | 総務 山田 | 社内チャット | 経理 鈴木 | | ドメイン管理者 | 総務 鈴木 | 社内チャット | 山田 | | 鍵・パスワードの保持者 | 山田(パスワード管理ツール) | — | 鈴木(緊急時のみ) | | 本番変更の承認者 | 山田 | 社内チャット | 代表 | ## H. 教訓 | 起きたこと | 原因 | 対策 | |---|---|---| | 2025-08 スライダー更新で表示崩れ、戻すのに半日 | 復旧手順が未確認だった。ステージングがなかった | ステージングを作成し、復旧を一度実施。プラグインは1つずつ更新 | ``` ## 10. 更新方針 - 委任段階を上げ下げしたら§8-F、事故・ヒヤリがあれば§7(よくある失敗)と§8-Hに追記する - 台帳(§8-A)は四半期に一度、版とEOL日を見直す。期限のあるもの(§8-C)は期限の2か月前に確認する - 本書(汎用版)は四半期に一度、各システムの教訓を取り込んで改訂する - 姉妹編「AI開発ハーネス設計」「AI開発コンテキスト設計」と用語・節番号の参照がずれていないかを、改訂のたびに確認する