Cost Breakdown

「見積もりが高い」と感じたときに
疑うべき5つのコスト

「他社より高い」「この金額の根拠が見えない」——相見積もりを並べて価格に納得できないとき、多くの発注担当者が感じる違和感には理由があります。システム開発の見積もりには、実際の開発作業とは別に、いくつもの見えにくいコストが積み上がっているからです。本記事では、見積書を前に「どこを疑い、どこを確認すればよいか」を、5つのコストの視点から実務的に整理します。

コスト1:多重下請けが生む「中間マージン」

見積もりが高くなる最大の要因のひとつが、多重下請け構造です。元請け企業が受注した案件を2次請け・3次請けへと流し、各社がマージンを抜いていく——このたびに、発注者が支払う金額と現場のエンジニアが受け取る金額の差が開いていきます。公正取引委員会が資本金3億円以下の約2万1000社を対象に行った調査では、自社より下位の事業者を挟む「中抜き」的な構造が全体の25.9%、最終下請けの層では33.5%に及ぶと報告されています(IT Leaders報道)。業界では、元請けが30〜50%、2次請けが10〜20%のマージンを取るのが標準的とも言われ、結果として1,200万円の見積もりでも、実際に開発するエンジニアに渡るのは半分以下ということが珍しくありません。発注担当者がまず疑うべきは、「この会社は自社で開発するのか、それとも受注して下請けに流すだけなのか」という一点です。提案書に登場する会社名と、実際に開発する会社名が一致しているか。ここを質問するだけで、見積もりの構造は驚くほど見えやすくなります。

コスト2〜4:人数・スコープ・リスクバッファ

次は、見積書の内訳そのものを疑います。第2のコストは「過剰な人数」です。人月単価の目安はフリーランスや小規模会社で60〜80万円、中堅のWeb開発会社で80〜120万円、大手SIerで150万円以上とされますが、注目すべきは単価そのものより、必要以上の人数と期間が積まれていないかです。第3のコストは「不要なスコープ」。要件に対して機能が過剰だったり、当面使わない管理画面や連携機能まで含まれていないか、機能ごとに工数が分かれて記載されているかを確認します。一式・一括の表記でまとめられていると、どこにお金がかかっているのか判断できません。第4のコストは「リスクバッファ」、つまり予備工数です。ある程度の余裕は健全ですが、予備工数が全体の20%を超えるようであれば、過剰な安全マージンが乗っている可能性があります。そして、見積書に人月単価が明記されず総額だけが示されている場合、それ自体が追加請求を青天井にしかねない危険信号だと考えてよいでしょう。

コスト5:見えにくい「保守の抱き合わせ」

最後のコストは、初期開発費に紛れ込む「保守・運用の抱き合わせ」です。見積書で運用・保守費用の欄が空欄、あるいは初期費用と一体になっている場合は要注意です。契約後に月額保守という形で費用が発生し、3年間で340万円以上の隠れコストになるケースも指摘されています。保守は本来、対応する範囲・稼働時間・障害対応のSLAを切り分けたうえで、金額を提示できるものです。ここが曖昧なまま総額だけが大きい見積もりは、後から効いてくるランニングコストを見えにくくしている可能性があります。発注担当者としては、①初期開発と保守の金額が分かれて記載されているか、②保守に具体的に何が含まれるか、③解約や他社への乗り換えの条件はどうなっているか——この3点を必ず確認してください。ここまで見てきた5つのコストに共通するのは、「総額の大小」ではなく「内訳の透明性」こそが良い見積もりの条件だということです。安いから良い、高いから悪い、ではありません。何にいくらかかっているかを、堂々と説明できる相手かどうかを見極めましょう。

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