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コンテスト・公募を主催する方へ
募集要項の「生成AIの扱い」文例集

生成AIを禁止するにも、受け入れるにも、まず「何を指すのか」を書く言葉が要ります。「AI不可」の一行では、ノイズ除去や自動彩色まで含むのかが決まりません。——そのまま募集要項に貼れる文例を、禁止型・申告型・部門分離型の3パターンで配布しています。

主催者・事務局向け CC BY 4.0 — 改変・再配布自由、出典表示不要

実際に起きたこと

いつどこで何が起きたか
2024年ポケモンカードゲーム イラストコンテスト(海外)ファイナリスト発表後に外部から生成AI利用の指摘。発表から11日後に失格
2024年1839 Awards(海外の写真賞)カメラで撮った実写真が、AI部門で3位に入賞。本人が種明かしをするまで誰も気づかず、発覚後に失格
2025年ストリートファイター6 イラストコンテスト「生成AIの使用は禁止」と明記していたが、受賞発表の後に SNS の指摘で判明し、入賞無効に
2025年埼玉県写真サロン(第42回)最優秀賞を取消し。主催者側の説明は「AIによる生成や加工の取り扱いについての定めはありませんでした」「選考過程で画像検索などの確認もおこなっておらず」

4件に共通することが2つあります。

第一に、発覚はいつも「発表の後」、指摘はいつも「外部から」です。応募時に見抜けた例は1件もありません。1839 Awards にいたっては逆方向——人間の実写をAIと見分けられませんでした。審査員の目でも、判定ツールでも、確実には見分けられないのです。

第二に、事故になったのは「AIが使われたこと」そのものではなく、「決めていなかったこと」「確認の手続きがなかったこと」です。

募集要項に書いておくべきことは「AIを見抜く方法」ではありません。見抜けない前提で、①何を許し何を許さないかの定義、②応募者に何を約束させるか、③疑いが生じたときの手続き——の3つです。

最初に決めること — 3つの道

どういう主催者に向くか
A. 禁止型手作業・撮影そのものを競う賞。権利関係の不安を避けたい賞
B. 申告型表現の結果を競う賞。AIの利用を排除しないが、把握はしたい賞
C. 部門分離型両方の応募者を受け入れたい賞

どれを選んでも、共通して要るものが5つあります。①「生成AIで作られた表現」の定義(ノイズ除去は含むのか?)、②応募者の宣誓③記録の提示を求める権利(入賞候補に絞って)、④事後の手続き(発表後に判明した場合の取消し)、⑤判定ツールだけを根拠にしないこと

どのパターンを選ぶかは主催者が決めることで、このページはどれかを勧めるものではありません。

文例A:禁止型

そのまま募集要項に貼れます。〔 〕は貴賞に合わせて埋めてください。

【生成AIの利用について】
  1. 生成AIで作られた表現を含む作品は、応募できません。「生成AIで作られた表現」とは、もとの素材に無かったもの(人物、背景、物、模様、文章など)を、AIが新たに作り出したものをいいます。
  2. 次のような利用は、前項の「生成AIで作られた表現」に当たりません(応募できます):ノイズ除去、明るさ・色の補正、手ブレ補正、被写体の自動選択や切り抜き、誤字脱字の確認など、もとからあるものを整えるだけの機能。
  3. 応募をもって、応募者は第1項の条件を満たすことを誓約したものとみなします。
  4. 主催者は、入賞候補となった作品に限り、制作の過程が分かる資料(撮影データ、レイヤーを分けた制作データ、下書き、作業履歴など)の提示を求めることがあります。正当な理由なく提示いただけない場合、入賞の対象から外すことがあります。
  5. 発表の後であっても、第1項に反することが判明した場合は、入賞を取り消すことがあります。
  6. 主催者は、AI判定ツールの結果のみを根拠として、応募の受付や入賞の可否を判断することはありません。

第2項が、この文例のいちばん大事な行です。ここを書かないと「AI不可」がノイズ除去まで含むのかが決まらず、善意の応募者が萎縮するか、解釈のずれで揉めます。第6項は応募者を守る行であると同時に、主催者を誤判定事故の当事者にしないための行です。手描きの作品が判定ツールに誤判定される事例は、実際に起きています。

文例B:申告型

【生成AIの利用について】
  1. 生成AIの利用の有無にかかわらず、応募できます。応募時に、次のいずれかを申告してください。
    利用なし=生成AIを使っていない / 支援のみ=もとの画像・文章などを整えるためだけに使った(ノイズ除去、補正、誤字脱字の確認など) / 生成あり=AIが新たに作り出した表現が作品に含まれる
  2. 「生成あり」の場合は、使ったサービス名と、作品のどの部分かをあわせてお書きください。
  3. 「生成あり」の作品の応募者は、使ったサービス名とモデル名、指示文(プロンプト)、生成した日時、AIが出力したもとのデータを、結果発表まで保管してください。主催者は入賞候補となった作品に限り、これらの提示を求めることがあります。
  4. 申告の内容が事実と異なることが判明した場合は、発表の後であっても、入賞を取り消すことがあります。
  5. 〔次のどちらかを選んで明記してください〕
    案1:申告の内容(生成AIを使ったこと)そのものを理由に、審査で不利に扱うことはありません。
    案2:審査では、申告の内容を考慮します。
  6. 主催者は、AI判定ツールの結果のみを根拠として、応募の受付や入賞の可否を判断することはありません。

3択は Amazon KDP の申告区分(AI生成/AI支援)に対応させたもので、国内でも小説の賞・投稿サイトで同じ考え方の申告が始まっています(星新一賞の記録保管義務、カクヨムの3段階タグなど)。第5項はどちらでも成り立ちますが、どちらなのかを書かないことがいちばん揉めます。より細かい申告が必要な場合は、来歴区分表の区分A〜Eが使えます。

文例C:部門分離型

【部門と生成AIの利用について】
  1. 本賞には〔一般部門〕と〔AI部門〕があります。
  2. 〔一般部門〕には、文例Aの第1〜2項を適用します。
  3. 〔AI部門〕には、生成AIで作られた表現を含む作品を応募できます。応募時に、使ったサービス名と、制作の手順の概要を申告してください。
  4. どちらの部門でも、主催者は入賞候補となった作品について制作過程の資料の提示を求めることがあり、申告や部門の選択が事実と異なることが判明した場合は入賞を取り消すことがあります。

第4項を「どちらの部門でも」としているのは、1839 Awards の教訓です——実写の写真がAI部門で入賞しました。部門を分けても、申告と記録の手続きは両方の部門に要ります。

応募フォームに足す項目の例

フォームの項目形式
生成AIの利用選択(必須)利用なし/支援のみ/生成あり
使ったサービス名記述(「生成あり」のとき必須)〔サービス名・モデル名〕
使った部分記述(同上)背景/人物/文章の一部 など
制作過程の記録の有無選択(同上)保管している/していない

紙の応募票に印刷して使える A4 一枚の様式も配布しています(配布ファイル)。

これだけはやらないでください

やらないことなぜか
AI判定ツールの結果だけで失格・取消しにする誤判定で手描きの作品が排除された事例が実際にあります。実写がAIと見分けられなかった逆の事例もあります。判断の根拠は、本人への確認と記録の提示に置いてください
「AI不可」とだけ書くノイズ除去・補正・切り抜きを含むのかが決まらず、善意の応募者ほど迷います。文例Aの第2項の定義をセットで
疑義の手続きを書かずに始める発覚はいつも発表の後、外部からです。取消しの根拠条項と手続きを先に書いていなければ、そのとき動けません
応募作品すべての制作データ提出を求める応募の負担が跳ね上がり、応募が減ります。入賞候補に絞るのが現実的です(海外の大きな写真賞も最終選考段階に限定しています)
「AI不使用であることを主催者が証明・保証する」と書く証明はできません。できるのは「申告と記録が食い違っていないかの確認」までです

配布ファイル

すべて CC BY 4.0 です。そのまま使っても、書き換えて貴社・貴団体の名前で配布してもかまいません。お使いになるときの出典表示・許諾・対価は不要です。使用の連絡・報告も不要です。

文例で書けなかった場面があれば contact@jumpstack.co.jp

「この賞のこの条件が文例に落ちない」というご報告が、次の版のいちばんの材料になります。

来歴区分表 v0.17 / 来歴標準プロジェクト (CC BY 4.0) 運営:JumpStack株式会社