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AIを一部だけ使ったとき、
どう書けばいいか

背景だけAIに描かせた。下書きの参考にした。誤字チェックだけ使った。——「全部AI」でも「まったく使っていない」でもない作品を、どう書けばいいのか。困るのはたいていこの中間です。

来歴区分表 v0.17 にもとづく CC BY 4.0

なぜ書き方が決まらないのか

AI利用を書くこと自体は、もう珍しくありません。投稿サイトにはチェック欄があり、募集要項にはAIの可否が書かれ、納品時に確認されることも増えました。

それでも書き方が決まらないのは、「どこまでをAI利用と呼ぶか」の言葉が共有されていないからです。誤字の自動チェックはAI利用でしょうか。ノイズ除去は。背景の切り抜きは。人によって答えが違い、しかもどちらの答えにも理屈があります。

結果として起きているのが、次の3つです。

  • 過剰申告——念のため「AI使用」と書いておく。実態より重く見られる
  • 過少申告——「これくらいは補助だろう」と書かない。後から指摘されて信用を失う
  • 沈黙——どう書けばいいかわからないので、何も書かない

来歴区分表は、この「言葉が無い」ところを埋めるために作られています。以下は規格 v0.17 にもとづく実務の書き方です。

判断の基準はひとつだけ

区分を決める基準は、道具の名前でも、AIという言葉が製品説明に入っているかでもありません。

入力に無かったものが、出力に現れたか。
もとからあったものを整えただけなら、新しい中身は生まれていません。もとに無かったものが出てきたなら、生成が起きています。

この一点で、まず大きく二つに分かれます。そのうえで「生成された部分を取り除いても作品として成り立つか」「人の手入れが新しい創作と言えるところまで来ているか」を順に見ていくと、区分A〜Eのどれかに落ちます。

順にたどれるA4一枚の判定フロー図(PDF)も配布しています。

作業別の早見表

実際の作業が、どの区分になるかの目安です。迷ったときは、AIの関与が大きいほうの区分を選んでください。関与を小さく申告すると嘘になりますが、大きく申告しても嘘にはなりません。

区分名前あてはまる作業の例
A生成的関与なしAI機能を一切使っていない。生成・非生成を問わない
B非生成的補助のみ誤字脱字の自動チェック/ノイズ除去・超解像・手ブレ補正/被写体の自動選択・背景の切り抜き/線画の自動整え・下塗りの自動着色/音声の文字起こし・音程補正/翻訳時の用語検索・候補表示
C従属的生成背景だけAIに描かせた/素材の一部をAIで作った/AIに出させた案を参考にしたが作品には残っていない/文章の一部をAIに書かせた(脇役の範囲)
D主要部分の生成+実質的改変主要部分をAIが作り、そこに人が作品と呼べるだけ手を入れた/AIラフを下敷きに描き起こした/生成塗りつぶしで対象を追加し全体を作り直した
E全面的生成AIが出したものがほぼそのまま作品になっている/トリミング・色味補正・軽微な修正だけを加えた

BとCの分かれ目でとくに迷いやすいのが、次の対です。左は「整えただけ」、右は「無かったものが出てきた」です。

Bになる(整えただけ)Cになる(新しく生まれた)
誤字脱字の自動チェック文章の一部をAIに書かせた
ノイズ取り・画質上げ・手ブレ補正背景をAIに描かせた
被写体の自動選択・背景の切り抜き生成塗りつぶしでものを描き足した
線画の自動整え・下塗りの自動着色AIのラフを下敷きにして描いた
音声の文字起こし・音程の補正メロディの一部をAIに作らせた
翻訳時の用語検索・候補表示機械翻訳の文章をそのまま使った
DとEの分かれ目

切り抜き、色の調整、ちょっとした直し、一部を消す——このくらいは「整えただけ」でEのままです。それを超えて、人が新しく作品を作ったと言えるところまで手を入れたならDになります。

場面別の文例

区分が決まったら、次は書き方です。区分は必ず水準(V0〜V4)と対で書きます。区分だけを単独で書くのは、この規格に沿った表示ではありません。水準の申請をまだしていない場合は、自己申告を表す V1 を使います。

投稿サイト・販売サイトの説明欄に書く

来歴 C-V1(自己申告)
背景の一部に画像生成AIを使用しています。人物・線画・着彩は手描きです。

区分と水準の対に、一行の補足を添える形です。補足は規格の要求ではありませんが、読む人の疑問をその場で潰せます。

納品物に添える

本作品の来歴:来歴 B-V1(自己申告)
使用したAI機能:ノイズ除去、被写体の自動選択
生成AIによる新規要素:なし
制作記録:レイヤー分けデータ、作業履歴を保管しています(要請があれば提示可)

仕事の納品では、区分そのものより「何を記録として持っているか」が相手の関心事になります。記録の所在を書いておくと、後から確認を求められたときに話が早く済みます。

プロフィール・ポートフォリオに書く

来歴水準:V1(自己申告)/作品ごとに区分を記載しています
プロフィールに区分を書いてはいけません。区分は作品に付くもので、作った人に付くものではありません。「区分Aの作家」のような書き方は、AIを使うことの善し悪しを決めないというこの規格の立場に反します。人に付くのは水準(V)だけです。

複数のプラットフォームに出す

投稿先ごとに用語が違うため、同じ作品でも書き方が変わります。各サービスの申告欄と来歴区分表の対応はプラットフォーム別のAI申告対応にまとめました。

書いてはいけない表現

規格 第3部で禁じている表示です。作った人にも、表示する場所にも当てはまります。

書いてはいけないことなぜか
作った人に区分(A〜E)を表示することレッテル貼りになる。区分は作品に付く
「AI不使用」「Human-Made」などを一緒に書くこと区分Aであっても保証ではない
「本物」「真正」などを一緒に書くこと中身が本物であることの保証ではない
水準を書かずに区分だけを表示すること確認済みと誤解される
区分Eを差別する表示、検索から外すことこの規格はAIの善し悪しを決めない

とくに「AI不使用」は使わないでください。この規格が示せるのは申告と記録が食い違っていないことであって、AIを使っていないことの証明ではありません。証明できないものを書くと、後で覆されたときに一番損をするのは書いた本人です。

1つの作品に複数の区分が混ざるとき

部分ごとに区分が違うときは、関与がいちばん大きい区分を全体の区分として申告し、必要なら内訳を書き添えます。

来歴 D-V1(人物:A/背景:D)

全体をDと申告したうえで、人物は手描きであることを添える形です。内訳は任意ですが、書いておくと「どこがAIなのか」という質問が来なくなります。

この書き方で困ったことがあれば contact@jumpstack.co.jp

規格は意見募集中です。実務で書けなかった場面のご報告が、いちばん役に立ちます。

来歴区分表 v0.17 / 来歴標準プロジェクト (CC BY 4.0) 運営:JumpStack株式会社