作品づくりのAI利用を表す、
共通の言葉。
生成AIをどれだけ使ったかを区分A〜E(作品ごと)で、その申告がどれだけ確かめられているかを水準V0〜V4(作った人ごと)で表す開示規格です。
なぜ、共通の言葉が要るのか
いま、逆向きの2つのことが同時に起きています。
使っていないのに、疑われる
判定ツールの結果ひとつで、値引きを迫られたり、原稿がボツになったりしています。しかも「使っていない」ことは、原理的に証明できません。完成した絵から制作過程の動画を作る技術まで出てきていて、タイムラプスも決定的な証拠にはなりません。
使ったのに、書き方がない
背景だけAIに描かせた。下書きの参考にした。誤字チェックだけ使った。困るのは、たいていこの中間です。投稿サイトごとに聞かれ方も選択肢の名前も違うので、同じ作品なのに毎回考え直すことになります。
この2つは、別々の問題ではありません。作品ごとのAI利用を表す言葉(区分A〜E)と、その申告を裏づける仕組み(水準V0〜V4)が無いことから、両方が起きています。だから来歴区分表は、まず言葉をそろえます。この規格は、どちらか一方の味方をしません。AIを使うことの善し悪しを決めないためです。
目的から探す
読む順番に決まりはありません。いま困っていることに近いところから読んでください。
3つの立場
この規格は「AIの検出」でも「証明」でもありません。見るのは、作った人の申告と制作の記録が食い違っていないか——それだけです。
善し悪しは決めません
区分A〜Eに優劣はありません。区分は「生成AIをどれだけ使ったか」の順序であって、作品の良し悪しの順序ではありません。全部AIで作った作品にも、同じように来歴はあります。
証明はしません
出来上がった作品を見てAIかどうかを見分けることは一切しませんし、勧めもしません。見分けるツールの誤判定で、実際に人が仕事を失っています。
保証ではありません
いちばん上の水準であっても、示せるのは「申告が後から確かめられる形で裏づけられている度合い」です。作品そのものの保証ではありません。
区分は作品に、水準は人に
ここがこの規格でいちばん大事なところです。作品1点ずつを検査するのではなく、作った人が「制作の記録を残す仕組み」を持っているかを確かめ、その裏づけのもとで作品ごとの区分を申告します。食品のHACCPやISO 9001と同じ考え方です。
「区分Bの作品を、水準V3の人が申告した」と読みます。区分と水準は、必ず対で表示します。
区分 —— 生成AIをどれだけ使ったか【作品ごと】
| 区分 | 名前 | どういう状態か |
|---|---|---|
| A | 生成的関与なし | 生成AIを使っておらず、AIが作ったものは作品に一切入っていない |
| B | 非生成的補助のみ | AIは使ったが、もとからあったものを整えただけで、新しい中身は作られていない |
| C | 従属的生成 | AIが作ったものが入っているが、脇役にとどまる。または参考にしただけで作品には残っていない |
| D | 主要部分の生成+実質的改変 | 作品の主な部分をAIが作り、そこに人が作品と呼べるだけの手を入れた |
| E | 全面的生成 | AIが作ったものが、ほぼそのまま作品になっている |
迷ったときは、AIの関与が大きいほうの区分を選びます(CかDで迷ったらD)。関与を小さく申告すると嘘になりますが、大きく申告しても嘘になりません。作業別の早見表はこちら。
水準 —— 申告をどれだけ確かめたか【人ごと】
| 水準 | 名前 | 何を確かめたか |
|---|---|---|
| V0 | 開示なし | 区分の申告自体をしていない |
| V1 | 自己申告 | 確かめていない。本人が区分を申告しているだけ |
| V2 | 記録あり | 本人が、決められた記録を残すと宣言し、抜き取りの確認に応じると同意した |
| V3 | 第三者が確認 | その人の記録の残し方を、認定を受けた検証員が確かめた |
| V4 | ずっと確認 | 制作環境をいつでも確かめられる状態にし、継続して確認している |
ダウンロード
いずれも CC BY 4.0 です。出典(来歴区分表 v0.17 / 来歴標準プロジェクト (CC BY 4.0))を書けば、書き換えても商売に使っても自由です。プラットフォーム、企業、学校が自分のルールや画面に組み込むことを歓迎します。ブラウザで読める 規格全文(HTML版)もあります。
意見を募集しています
v0.17は「意見募集中の案」です。次の9つは、わざと決めずに残しています。規格は1年ごとに見直す前提で、議論と経緯はすべて公開します。どれも、その現場にいる方でないと答えが出ない論点です。ご自分に近いところだけご覧ください。
- すべての方へ 学習データの来歴を、別の軸として作るべきか 無断で学習したモデルを使うことは大きな関心事ですが、使う側から確かめる方法がありません。任意の書き添え欄にすると、今度は書けない人が疑われるという別の問題が起きることも見えてきました。どう扱うべきか決めきれていません。
- 手作業・アナログで作る方へ 絵画・工芸・フィルム写真で、何を記録とするか いまの記録の例は、レイヤーデータや作業履歴などデジタル前提です。油彩画に相当するものはありません。制作日誌、下絵、窯出しの記録、ネガ——もともと作っている記録のうち、何が使えるのか。ここで実態を外すと、いちばん誤判定に困っている方を締め出します。
- 絵以外を作る方へ(文章・音楽・翻訳・映像) 絵以外での、区分CとDの分かれ目 いまの判定は「AIが作った部分を取り除いても作品として成り立つか」です。これは絵を前提にしています。翻訳のように分解できないものや、プログラムのように取り除くとそもそも動かなくなるものでは、この見方がうまく働きません。分野ごとに何を1つと数えるべきか、うかがいたい論点です。
- すべての方へ 区分Bの範囲を、どのくらいの頻度で見直すか ソフトにAI機能が組み込まれていく以上、Bの範囲は年々広がります。速く見直すほど実態に合いますが、過去に表示した「来歴 B-V3」の意味が動くと、表示そのものが信用できなくなります。
- 会社・スタジオ・工房の方へ 何人かで作った作品で、誰が申告の責任者になるか とくに、発注した側が制作に口を出す場合です。制作会社とクライアントのどちらが申告の責任を負うのか、実務ではどう決まっているか。
- 会社・スタジオ・工房の方へ 会社の水準を、どの単位で見るか 大きなスタジオで部署ごとにやり方が違う場合、事業所ごとで足りるのか。部署だけで水準を取れたほうが現実的か。
- 学校・教育機関の方へ レポートや論文でAI利用を書くとき 区分A〜Eと水準V0〜V4をそのまま持ち込むのが適切か、学校向けには別の書き方が要るのか。AI検出ツールの扱いについても、現場のお考えをうかがいたいところです。
- 表示する場所・発注する方へ 水準を持たない人の扱いを、どこまで規格で縛るか v0.14で「V0をバッジとして表示しない」「水準がないことだけを理由に不利に扱わない」という条件を入れました。ただし表示する場所や発注する方との間に契約関係がないため、実効性は「規格に沿っているとは言えない」という評価にとどまります。これで足りるのか、別の手立てが要るのか決めきれていません。
いちばんありがたいのは「この区分では自分の制作を表せない」という具体的なご指摘です。
賛否、実務での困りごと、規格の穴のご指摘、いずれも歓迎します。番号だけでも、まとまっていなくても構いません。
更新の記録
| 日付 | 内容 |
|---|---|
| 2026-08-07 | 来歴区分表 v0.17 を公開。デザイン実務者からの意見をもとに、別紙「よくある制作フローと区分例」を新設。「CとDの分かれ目」に「何を1つの作品として申告するか」の補足を追加し、「これから決めること」に9項目め(作品ごとの記録が制作実務と合っているか)を追加。区分・水準の定義そのものに変更はありません |
| 2026-08-06 | 来歴区分表 v0.16 を公開。照会番号の頭を RSK- から RK- へ変更(RSK- はスキーム文書の番号に使うため、混同を避ける)。区分の順序についての言い方を直した(「A〜Eに上下はありません」と言いながら「下ではなく上の区分を」と書いており矛盾していたため、「生成AIをどれだけ使ったかの順序であって、良し悪しの順序ではない」という書き分けに改めた)。用語の整理2か所。規格の内容そのものに変更はありません。判定フロー図も更新 |
| 2026-08-05 | 来歴区分表 v0.14 を公開。水準V0の扱いを明確にし(V0は表示に現れない/V0をバッジとして表示しない)、「水準の扱いについて」の4条件を新設。意見募集の論点に8つめを追加 |
| 2026-08-04 | 規格全文・実装ガイド・運用ガイドのHTML版を公開。用語集、よくある質問、プラットフォーム別のAI申告、C2PA等との関係を追加 |
| 2026-08-03 | 来歴区分表 v0.13(意見募集中の案)を公開。公開の経緯(note) |
規格は1年ごとに見直す前提です。見直しの議論と経緯は、すべて公開します。